「桜川のサクラ」天然記念物指定11種

三好学博士命名11種

「磯部の百色桜」といわれ、花の形や色、匂いのさまざまな山桜が、磯部地区の櫻川磯部稲村神社から磯部桜川公園周辺に保存されています。

磯部の桜は1974年に国指定天然記念物に指定されましたが、その対象は三好博士が命名した11種(桜川匂・樺匂・梅鉢桜、白雲桜、薄毛桜、初見桜、初重桜、源氏桜、大和桜、青毛桜、青桜)に代表される学術的に貴重な山桜群です。「岩瀬は花こう岩の土質が桜の発芽に適し、真壁あたりまで山桜が豊富。自然に品種を増やし学術的にも貴重な地になった。ただし花見の名所になったのは大正以降のこと」櫻川磯部稲村神社宮司の磯部亮さんはそう話します。

もともと桜川は、木花開耶姫(このはなのさくやひめ)をまつる同神社を中心に馬場や広場に桜が植えられ、古くから桜の名所だったとされています。

桜川匂(さくらがわにおい)

学名:forma odoratissima(odorassimaは、“非常に香気のある”の意)芽は淡茶色、花は純白色で径3.0cm程度。強い芳香があり、花軸が短い。

樺匂(かばにおい)

学名:forma kaba-odora (kaba-odoraは和名に因る)芽は樺色、花は白色で径2.8cm程度。花弁が丸く、強い芳香がある。

初重桜(はつがさねざくら)

学名:forma insignis (insignisは“著名な”の意)芽は赤色、花は白色で径2.8cm程度。花弁が6枚以上になり、大和桜に似るが八重の度合いが一層強い。

初見桜(はつみざくら)

学名:forma nova (novaは“新しい”の意)芽は樺色、花は白色で2.8cm程度。 花梗(花を支える枝)が細長い。

大和桜(やまとざくら)

学名:forma insignis (insignisは“著名な”の意)芽はきわめて美しい濃赤色、花は純白色で径3.0cm程度。花弁が7~8枚ある。

源氏桜(げんじざくら)

学名:forma gurandis (gurandisは“大型の”の意)芽は赤色、花は淡紅色の縦すじがある。径4.0cm程度。

白雲桜(しらくもざくら)

学名:forma pura (puraは“純粋な”の意)芽は樺芽、花は白色で径2.8cm程度。非常に多く花を付ける

薄毛桜(うすげざくら)

学名:forma evanescens (evanescensは“消失する”の意)芽は黄茶色、花は白花で径2.2cm程度。花梗等に微毛がある。

青桜(あおざくら)

学名:forma viridi-folia (viridi-foliaは“緑色の葉”の意)芽は緑色、花は白色で径2.5cm程度。花弁は狭く、萼は緑色。

青毛桜(あおけざくら)

学名:forma viridi-pubescens (viridi-pubescensは“緑色の細軟毛のある”の意)
芽は緑色、花は純白色で径2.2cm程度。
葉柄(葉と茎をつなぐ細い部分)・花梗共に毛がある。

梅鉢桜(うめばちざくら)

学名:forma anqustipetara(anquestipetaraは“狭い花弁”の意)芽は緑色、花は白色で径2.6cm程度。花弁がきわめて狭い。

写真提供:櫻川磯部稲村神社